COLUMN山林にまつわるコラムを発信します
森林のはたらき
森林は木材を生産するだけではなく、様々な多面的機能があります。それらの機能は、人々やそのほか多種多様な生き物が、共生するための豊かな環境を創りだすなど、多くの恩恵をもたらしています。
具体的には「生物多様性保全」、「地球環境保全」、「土砂災害防止・土壌保全」、「水源涵養」、「物質生産」、「文化」、「快適環境形成」、「保健・レクリエーション」の8つの機能に分けられます。
01.生物多様性保全
多種多様な生き物が豊富に存在していることを「生物多様性に富む」と言い、種の数だけではなく、様々な性質や現象、繋がりを持つことを意味しています。森林には様々な種類の樹木や草花が植生し、それらをエサや住み家とする動物や虫も生息しています。森林は生物多様性の宝庫として遺伝子や生態系を保全する根源的なはたらきをします。
02.地球環境保全
二酸化炭素は、地球温暖化の原因と言われている温室効果ガスのひとつです。現在の技術では、人々の生活によって排出される二酸化炭素は抑制することはできてもゼロにすることはできません。森林の樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素として固定することにより成長します。この炭素固定によって大気の二酸化炭素濃度を低下させ、地球温暖化を緩和することができると言われています。さらに、適切に管理された森林はよりよく成長し、二酸化炭素の吸収効果が高まり、地球環境の保全につながります。
03.土砂災害防止・土壌保全
森林の樹木や灌木・下草は、土中深くに根を張ることにより土壌を固定し、斜面崩壊を少なくする効果があります。落葉・落枝によって地表面が覆われることで降雨による雨滴浸食を防ぎ、土壌の流出を抑えるはたらきをします。さらに、適切に管理された森林では、樹木の成長が促進されるとともに下層植生が充実するため、シカ等の剥皮被害による樹木の枯死を軽減につながり、土砂災害防止機能を高めることにつながります。
04.水源涵養
落ち葉や土壌生物によって形成された森林土壌は、雨や雪をスポンジのように受け止め保水する役割を果たします(洪水緩和機能)。そのはたらきによって、土中に水分を蓄えながらゆっくりと時間をかけて河川に水を送り出すことができます(水量調節機能)。また、雨水が地中へと浸透する過程でろ過されるため、水質を浄化するはたらきもあります(水質浄化機能)。これらの機能から森林は「緑のダム」とも呼ばれます。
05.物質生産
森林は、私たちの生活に欠かすことのできない木材や食料などの林産物を産出します。建築用材に加工された木材は柱や梁など家づくりの根幹をなし、建築物として利用できない間伐材や枝葉などは木質バイオマス発電の燃料としてクリーンエネルギーに形を変え、私たちの生活を支えています。また、きのこや山菜などは食料として、竹は生活用品や伝統工芸品として利用されています。そして、これらの資源は適切に管理することにより循環的に利用することができます。
06.文化
森林は、新緑や紅葉など四季折々に様々な姿を見せ、自然観の形成や芸術・行楽などの伝統文化形成・継承の基盤となっています。建築物や伝統工芸品などの文化財を構成する木材や漆などを供給し、史跡や名勝などと組み合わさると趣のある景観や風情をもたらします。また、自然豊かな森林での野外活動や体験学習は、道徳的価値観を形成するはたらきをします。
07.快適環境形成
森林は、植物の蒸発散作用によって気温のピークを緩和し、アスファルトなどの人工被覆が引き起こすヒートアイランド現象を軽減に貢献します。また、光合成によって大気中の汚染物質を浄化し、塵埃は枝葉に付着させることによって大気を綺麗にします。そして、枝葉や幹によって吹き付ける風を分散させ、季節風や台風がもたらす被害を軽減させる役割を果たし、騒音を減少させる効果もあります。このように、森林は様々な面で、快適な生活環境の形成に貢献しています。
08.保健・レクリエーション
私たちにとって森林は癒しの場であり、森林浴をすることによって気持ちが安らぎ、リラックスする効果があります。また、自然の中でキャンプやハイキングなどを行うことで、健康保養や自然美を楽しむことができます。これらの効果は、森林が発する揮発物質(フィトンチッド)や超高周波(ハイパーソニック・サウンド)などにより五感が刺激され、ストレスホルモンの分泌が抑えられてことによるものだと考えられています。